持続可能な開発目標SDGsは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されてから10年が経過しました。企業の社会的責任(CSR)は、「慈善活動」の域を脱し、社会価値と経済価値を同時に生み出す「共有価値の創造(CSV)」にシフトしています。最近、過去10年を振り返ると、その進化を支えるエンジンの一つは、AI(人工知能)ではないだろうかと感じます。
2022年のChatGPTが登場して以降、AIの進展は著しく、AIの技術的な可能性を説く研究は数多くあり、最近では製造業からサービス業まで生成AIの活用も本格化しています。しかしながら、企業がAIを活用し、どのような効果がもたらされているか、そしてCSVの向上に繋がっているかはまだ見えていないような気がします。
例えば、製造セクターにおいては、自動車などの製造現場の高度化として、デジタルツインやIoTを駆使して、サプライチェーンの無駄を極限まで削ぎ落とすことにありますが、これがSDG 12(つくる責任)や13(気候変動)への直接的な貢献につながるわけです。ここではAIは、いわば「熟練工の勘」をデジタル化したような、現場を強くするための究極の道具として機能しています。
一方で、金融セクターでは「情報の処理と透明性」でAIが貢献しています。大規模言語モデル(LLM)がESG報告(サステナビリティ報告)の自動化と精度向上に貢献しています。金融はAIにより、社会の資金を正しい方向へ導く役割を、より強固なものにしていると言えるかもしれません。
2014年以降、発展してきたAIが「過去から未来を予測する」ものだったとすれば、生成AIは「最適な未来をその場で作り出す」ものとして、サステナブルな製品設計を自ら生成したり、複雑な社会課題に対する解決策をドラフトしたりと、その貢献はより創造的なステージに移っているのではないでしょうか。
SDGsの教育の民主化(SDG 4)におけるパーソナライズされた学びや、企業の透明性を支えるAIガバナンスの構築など、AIは「効率」だけでなく、その先の「公平性」や「信頼」を担保する重要な役割を担うとも言えます。AIによるSDGsの実現というのは、単に最新ツールを導入すれば済むという話ではなく、組織がいかに「社会からの期待」を経営の中心に据え、自社の強みとテクノロジーを噛み合わせられるか。結局は、そこに尽きると考えられます。
現実的には、企業はROIを念頭に置いた投資が前提となっていますが、AIの活用はもはや企業活動のためのツールではなく、サステナブルな未来を創るための経営資源の一つであると言えるのではないでしょうか?

