2026年春、沖永良部島を訪問しました。ユリ、じゃがいも、キクラゲでよく知られている鹿児島県の離島です。エコロジーと人との関わりについて閉鎖系である離島で実態を探索することを目的としていました。そこで参加したビーチクリーンから得たソーシャル・イノベーションのライフスタイルについて書いてみたいと思います。
沖永良部島に行ってきたと話すと、それはどこですかという質問を受けることが度々あります。本土からですと那覇空港からもアクセスできるため、その場合、沖縄に飛んでからプロペラ飛行機で40分ほど戻ることになります。地理的にみても、琉球の文化を遺す島のようで、お墓をみるとわかりやすいです。
さて、ビーチクリーンに参加すると意識するようになりますが、こんなに国内外のゴミが流れ着くものかと驚きます。海洋ごみは、国内外の社会課題です。実は日本で社会問題化したのは2018年で外圧によるものだ、という報告書があります(注1)。関連する法律は複数ありますが、国際的には、1972年採択の「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(ロンドン条約)があります。国内では、2009年に成立した「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」、そして、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(2022年施行)」などがあります。
その効果は別に改めるとして、沖永良部島では3度目のビーチクリーンになります。指導してくれたのは子どもたちです。10年前、小学校の夏休みの自由研究で環境をテーマにすることにしたそうです。具体的に何を、と考え海岸沿いのゴミに着目した、という話から始まります。
このビーチクリーンは兄弟姉妹たちで継続し、そのインパクトは島の人々だけではなく、むしろ、国内外の環境に関心のある人々に伝播していきました。各方面からスピーチを依頼され、バンコクで開催されたUNESCOの会合でも発表しています(注2)。
今回、我々にも英語の字幕を作成してプレゼンしてくれました。翌朝、早朝にビーチに集合しました。それは、子ども達と同じ方法で実施し体験するためです。つまり、毎朝、登校前の時間を活用して15分間だけ行います。複数のルールを設けているようです。いやな時はしないそうですが、それでも、365日15分そして10年間ですから。
まずは、大きなゴミを10分間集めました。袋がすぐに一杯になります。ペットボトル、サンダル、ブイ、バケツ、発泡スチロールなどなど。そして、その後の5分間は、「マイクロプラスチック」に挑戦します。5ミリ以下と定義されています。砂かマイクロプラスチックかを見分けるのは容易ではありません。
前日のプレゼンで,マイクロプラスチックは,海中の生き物に見えづらい青色が残っていること、それ以外は生物が口にしている可能性があり、その危険性と負の連鎖について話を聞いていました。確かに、青色が目立ちました。ピンセットを使って拾ったものの,これでは人間が作ったこの膨大な海洋ゴミの回収は不可能ではないか,と思わざるをえません。
それでも,この家族は続けてきました。ほんの少し回収したマイクロプラスチックを手渡すと,「ありがとうございました。海の命を守ってもらって」と言われました。回収したマイクロプラスチックは瓶に入れて封をし、学校の教材として使ってもらうそうです。比較的大きなゴミは、この活動を受けて行政が海岸にゴミ箱を設置しましたのでそちらに入れることができます。
この家族では,この活動を家族単位の社会的責任Family Social Responsibility: FSRと名付けたのです。この家族は「うじじきれい団」といいます。うじじきれい団は環境活動家になりたいわけでもなさそうです。自らのキャリアは考えていて、父親が美容室を経営していることの方が強く影響しているのか,長女は将来美容師になりたい,と話してくれました。
うじじきれい団にとって,ビーチクリーンは日常生活の一部なのでしょう。一人ひとりの活動から社会変革につながる,小さな変化からソーシャル・イノベーションが起きる,とソーシャル・イノベーションの研究分野では述べられています。まさに,この活動はソーシャル・イノベーションであり,それを起こすためのライフスタイルだと確信しました。「ソーシャル・イノベーションの日常化」が起きていることを知らされたのです。
これからも毎日ビーチクリーンを続けます。CSRではなく小規模な単位であるFSRという考え方、そして、一人ひとりができることを教えてくれました。我々の次の行動は何でしょうか?
注1)https://jsil.jp/archives/expert/2020-4
注2)https://news.un.org/en/story/2024/05/1149481

